たしか私が小汚い小学1年生だった頃のこと。
時は昭和まっさかり。子供はみんな外で遊び、友達の誘いがなくてもとりあえず外に出かけ、豆腐屋のラッパの音や団地の給水塔のスピーカーから5時の時報が流れると、それを合図になんとなく帰り支度をはじめたりするもんでした。
あの頃は、任天堂なんて花札だのトランプだの手品だの地味なメーカーだったし、当然ゲームもなかったのよ。そして、そんな呑気な小学生たちを、恐怖と好奇のどん底に陥れる人物が登場したわけでして。
その名は「
もんちょうしろう」。
なんかよくわからんが、子供らが遊んでいるところに現れると言われる、謎の男なんである。
しかも、それが子供らの話題に上るようになると、さらに学校からの保護者向けプリントでも
「モンチョウシロウと名乗る不振人物がいるようなので家庭でも注意してください」みたいなお達しがあり、にわかにうちのクラスではモンチョウシロウブームに!
「モンチョウシロウのモンタージュ写真を作ろう!」と、ノートとえんぴつを持って張り切ってる子や(でもそれはただの予想図ってんだよ、と突っ込むほど賢い子はおらず、意味もわからんままにそうだそうだ作ろう!!と盛り上がった。)、
モンチョウシロウの歌というものまで発生した。
・モンチョウシロウの歌(作詞作曲者不詳)
おーれの名ーはモンチョウシロウ
調子がいいからモンチョウシロウ
なんだこりゃ、である。
ちなみにハ長調でドードレミーソーファーミミレー、シーシードレーファーミーレレドー。今でも耳に残る旋律だよ。もっといいことを覚えていたかったが、今更仕方が無いのだ。
で。
これだけ書いててモンチョウシロウ本人に関する具体的な記述が皆無なのは、結局私のまわりでは誰も彼に遭遇しなかったんである…。
とはいえ、今ネットで調べてみたら、
実際にモンチョウシロウに会った人が結構な数いるではないの。実在したのか!!
(そりゃまあ学校からの保護者向けプリントにも載るくらいなんだから、口裂け女の類のような単なる子供の噂話の産物って範囲を超えてるわな)しかも、出没エリアや年代がかなりの広範囲にわたっているみたいだ。
へえええ。
ちなみに、ネットで拾い集めた情報などによるモンチョウシロウは
・自転車に乗った変なおっさん
・練馬・杉並・世田谷・三鷹・府中・小金井・調布・保谷・田無のあたりに出没
・子供らを呼び集めて自分の名前を復唱させる
・漢字で書くと門長四郎(しかし私らはモン・チョウシロウのように発音していたが)
・
一升瓶など空き瓶に蟻を大量に詰め込んでいる・その蟻を売って商売していると自称。
ひいいい。オトナから見りゃ完璧にいかれたオヤジじゃねーか!!
ありんこは嫌いじゃないが、こいつは遭わなくてよかったよ!!
そうだよな、たしかその頃だったと思うが、うちのおかんが「変な人がいるから気をつけろ、絶対にくっついていっちゃダメだ」としつこく言っていた。
学校で配られたプリントの内容は覚えてないが、たぶんうちの学校では、モンチョウシロウを確実に危険度の高い変質者とみなしてたんではなかろうか。
しかも、ネットでの情報を見る限りでは、女子よりも男子に声をかけていたみたいだ。こいつはショタホモか、それとも小学生男子と同レベルの知能しかなかったのか。
…えーと。出没範囲はともかく、年代も長期にわたっているっていうのは、もしかして模倣犯もいたってことじゃないかなと思ってみたり。昭和40年代に会った人や、昭和60年代中ごろになってから遭遇したらしい人もいるようだし。
ううむ。これって、かつてモンチョウシロウの洗礼を受けた奴が変なオトナになり、そいつも勝手にモンチョウシロウを名乗って似たような活動を始めたとか、そんな感じの奴もまざってたり?
(勝手な推測かもしれないですよ、すいません。)
でも、もし模倣犯がいるのなら、切り裂きジャックのごとく時を経て突然復活したりしてな。多分、目撃者の最年長は今50代中ごろか初めくらいであろうか?
しかし、悲しいことに、今ではおもてで遊ぶようなお子様はほとんどいないし、第一そんな変な奴がいたら、あっというまに通報されてしまうのがオチだわな。
これじゃ、モンチョウシロウがかつての様な伝説の人になる暇なんてないであろうよ…。
なんだか、私自身や私のまわりの子が遭遇したわけではないので、どうもしまらないオチである。すいません。
まあしかし、モンチョウシロウは単なる変質者ではなく、多摩地区のノスタルジーの人みたいなんだよね。
ちょっとこれから気にかけてぼちぼち情報収集してみようかと。以外と、昔の新聞など掘りこせば何か載ってるかもしれないしねえ。
[30回]
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