「超能力者 ダイゴヒロミ!!」
…たしかそんなタイトルだったと思う。
1980年代半ばあたりのある日のこと。雨のために巨人戦の中継が中止になった。なんせまだ東京ドームも出来てない時代だったから、そんなのしょっちゅうよ。そして新聞を見ると、「中止の場合
『超能力者 ダイゴヒロミ!!』」と書いてある。
おお。私は野球は見ないが超能力特番は見逃さないバカタレなので、喜んでチャンネルをまわした。そして始まったダイゴヒロミ!! ちなみにそんな名前はそのとき初めて聞いた。
同じ超能力特番でも、ユリ・ゲラー物なんかと違って、ダイゴヒロミ!!はとても質素な作りだ。豪華ゲストを招いたスタジオ物ではなくオールロケで、建設的に言えばドキュメンタリータッチ、現実的にはローバジェットなのだろう。
そしてタイトルロールのダイゴヒロミという人は、歳は28歳とかって言ってたと思うが、でぶっちょで長めのおかっぱ頭のありきたりな女子である。美人でも不美人でもなく、まだ若いのにちょっとおしゃべり好きなおばちゃん風。ロングのギャザースカートなどはいて、この人は小岩のヨーカドーのセールに来て、Lサイズコーナーで化繊のブラウスなど物色しているかも、と思わせるものがあった。つまり、
超能力者にはこれっぽっちもみえないのである。
まずヒロミは、番組スタッフをある町の一軒家に案内する。3人で普通の道をすたすた歩いて向かうのだが、軽く説明をしながらもちょっとうれしそうなヒロミの表情が印象的だ。
その一軒家では、お母さんと娘さんだかお姑さんとお嫁さんだか、62歳と38歳みたいな普通の女性コンビが待っていた。この家では何かこう、不幸の連続だか怪現象だかが起こり、困り果てて、かねてよりヒロミに解決を依頼しているのだという。いわばヒロミの超能力商売のお得意様である。
2階の6帖間にあがると、ヒロミは部屋の一角、たんすの脇あたりの箱やらなんやらが積まれたところを指す。「前よりだいぶ良くなったんですけど、まだ、この辺がかたづけ足りないってご先祖様が言ってます。もっときれいにしないと」。
どうも家の中が片付いてないからご先祖が怒って何かやってるって事らしい。頬に手をあて、そうですね、もうちょっと片付けますなんていってる女性たち。
そんなに散らかってる風な家でもなく、あの程度でご先祖が怒るものかどうかよくわからないが、ヒロミの超能力を称えるナレーションが入る。
どうも超能力も霊感もごっちゃであるが、それよりも私の心に残ったのは、この家がごく普通の4DK程度の地味な家だったことだ。ほれ、超能力者なんて個人の家で雇うと結構な金額とられるんだろうし、そんな余裕があるのかとか、余計な心配をさせてくれるのだ。
それにしても、この地味な母娘はどこでヒロミの存在を知ったんだろうか。
さて、今度はヒロミの予知能力の凄さを実証すべく、一向は競馬場に向かう(多分府中だったか)。一般席に陣取ったヒロミは、
そこでまず幕の内弁当をたいらげ、勝馬か何かをチェックしながら予測を始める。もちろんまわりには普通のお客さんが大勢いる。
各馬一斉にスタート、たちまち客席からの歓声と怒声が轟く。やった、1R的中!!ヒロミ自身はしゃいで喜んでいる。(もちろんここで効果的なテロップとSEが
ガガーン!みたいに入る)
…超能力を賭け事に利用するなよ、って事はおいといて、話の続き。
そしてヒロミはまたしても弁当を要求。彼女の場合、超能力を使うと非常に腹が減るんだそうで、道理でこれじゃ太っているはずだともいえる。
それでも二個目の幕の内のカロリーの賜物か、さっそくまた見事に的中!恐るべし、ダイゴヒロミ!!(
ガガーン!)
そして、その日のヒロミの勝率が表示される。いや、もろにはずしてるのも沢山あるんですが、そこはそれ、彼女は競馬はまったく初めてなのにこんなに勝ってやはりすごいというナイスフォロー(
ガガーン!)。
…そんなダイゴヒロミであるが、それっきりでなのである。
たしか、この番組は再放送もされてないし、私の知る限りではヒロミは別の超能力特番にも出てないと思う。ネットで検索しても出てこない。
果たして、それなら私が見たものは一体なんだったんだろうか。
あれは架空の人物で、やらせか芝居か仕込みかサクラか劇団員だったのか?それとも、まさかと思うが本物の超能力者だったのか?
今考えると、特番なのに雨傘番組という放送スタイルも不思議だった。
しかし彼女が何者だったにせよ、「屈託の無い太めの女」「超能力を使うと腹が減るから弁当もう1個」など、既存の超能力者たちの作り出した、神秘性や気取ったイメージなどをぶち壊しにした功績はかなりでかいのではないかと思うんだが、いかがなもんであろうか。
以上、他にも何かいいことやったかもしれないし、かなり記憶違いの部分もあると思うけど、確認しようにも誰も知らないから出来ないんだわ。すいませんが大目に見てやって下さい。
誰か知りませんかね、こんなダイゴヒロミを…。
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